サガフロンティア2発売10周年記念 サガフロンティア2開発者インタビュー

「長く遊んでいる人たちでも遊べる、そんなものを作りたいというのが究極の目標ではあります。」

(ここまでかなり長く質問させて頂いた+録音機の残り時間の都合から、一問一答?に入ります)

好きなキャラクターは誰ですか?

コーデリアです。

【X氏補足】 コーデリアは名前惚れです。すごく好きな「リア王」の末娘の名前だったので。 他でも話しているように、開発中にいじっているのは製品版とはかなりかけ離れたものなので、 ゲーム内のイメージからコーデリアが好きになった、という訳ではありません。

好きな武器系統はなんですか?

特にないですね。そこはなるべく公平に見ないといけない立場なので…。 槍の効果をうまく使えるようにはしたいな、とは思うんですが、それくらいです。

好きなシナリオはありますか?

開発中はイベントをほとんど見ていない(出来ていない)ですからね〜。「再会」ですかね。 「わかってないよな〜、こうやって喰うのがうまいんだ」っていうのが K津さんらしいセリフだなと思って。

好きな敵とかはいますか?

フロ2だとずいぶん昔のこともあって、かなり忘れているので難しいですね…。 好きな敵はだいたい強くしていると思うんですけど…。 あ…ドローレムとか結構好きですよ。ああいういやらしい敵は。

プログラムを組むなかで、ここにはこだわった、というところは何ですか?

ロールは結構大変だったこともあって、色々な所から呼び込んでいるのでバグの温床にもなっているんですが、 どうしても入れたかったのでねじ込んでいます。 これは一から自分から作ったので、結構ここに凝ったという部分はありますね。

未だにフロ2がプレイされていることについてどう思われますか?

とても想定してないです、という感じですね。 アーカイブスが出たからやる、というのはわかるんですが…。 ゲームの寿命が思ったより長いので、それだけのものが作れたか、というと自信はないです。 嬉しいのはあるんですが、なんとなく申し訳ないという感じはどうしてもあります。

ゲームなんで最初の想定として繰り返し長く遊べるようには作るんですが、 でも長く遊んでいる人には何か物足りないものがあるはずなので、そこが申し訳なく思います。 その人たちでも遊べる、そんなものを作りたいというのが究極の目標ではあります。

すごろくみたいなゲームがいつでも引っ張り出して遊べるように、 コンピューターゲームだからハードとかの問題はあると思いますが、 いつでも出して遊べるものを残していけたら、と思います。

しかし4〜5年が賞味期限かと思ったらそうでもないので、油断はできないなぁ、と(笑)

フロ2で時間があったらこれはやりたかった、というものは?

カスタムアーツは作りたかったですね。 あそこでオリジナル技を作る、というのを作りかけていたので…。 でも要素としては非常に大きいものだったので、早い段階でスパッと切って正解だったと思います。

今後のご予定とかは?

何か色々やってます、ということで秘密で(笑)  何を作ってます、ということは意味がなくって、自分が携わったゲームを誰かが遊んでくれたら良いと思っています。 私は自分の名前を表に出したいタイプではないので…。

(これにて録音部分は終了。13時から16時まで、なんと3時間!!  録音の前後にも色々とゲーム関係の話題があったので、以下にその内容の簡単なメモっぽいものを紹介します。)

フロ2のキャラについて

ナルセスのキャラはすごくK津さんらしいですね。 素直に自分の気持ちを出せないタイプ、というのが実に。

ラストパーティにミーティア、ロベルトのような一般人が出てきたのは不思議ですね。 なぜでしょうか?

技について

高速ナブラの「ナブラ(∇)」は、発散の意味です。 海外版の高速ナブラの訳語ですが、Reverse Deltaと、High speed nebulaの回があります。 海外では前者が誤訳ではないかと思われてるそうですが、前者が正解、というか私が下訳をしたものです。

後者は、下訳する時間がとれずに(大体、開発末期に同時進行になるため) 翻訳チームに丸投げにしてしまった際のもので、ナブラはネビュラではないのでこちらが間違いです。 と言っても校正でそのまま通しているので翻訳チームの人の責任ではありませんが‥‥。

プロレスは、他の格闘技と違って、技をキレイに受けてくれることが前提なのでとても参考になります。 開発にもプロレス好きも多いですよ。 キッチンシンクは胃袋を狙うプロレス技なんです。 ちなみにキャラによる体術可/不可はグラフィックの作業量を減らす都合によるものなんです。

ダメージについて

最大ダメージ値を決めておいて、それに1に向かう漸近線をかける(乗算する)ことで、 バランスを取る(ダメージ等がオーバーフローしてしまう)作業を省力化しています。 プレイヤーに求められる成長曲線があるので、それに応えつつどんな曲線にするか、まず最初に考えます。

【X氏補足】 =(ALFA * X^2)/(BETA + X^2)  ALFAに漸近する、単調増加関数としてこの式を愛用しています。 フロ1以降の計算処理では、この式が必ずどこかに隠れているはずです。 (SFCでは引き算に分解できない計算式は、処理負荷の都合で使っていないため) 武器などの系統ごとにこのBETAをいじることで、成長特性(Xは成長項目)を変えています。

よくわかる漸近の解説

乱数について

(アンリミの)外道の書は普通に出るはずなんですが… 二つの乱数を組み合わせたので、かなり出にくくなっているのかも。 乱数は、ソニーからもらった乱数にスタッフが手を入れているのですが、 それがサガ独特のくせになっている可能性がありますね。

物欲センサーですか、ホントになんなんでしょうね? もちろんそんなふうには作っていないんですが(笑)

アルティマニアについて

生データをベントさんに渡しています。 いくつかの表(式?)を組み合わせて算出させているので、 それに気付かずに単純に取り出しちゃうと正しい値が出て来ないこともあると思います。

K津さんについて

K津さんはだいたい、一作おきにシナリオに力を入れて作る傾向がありますね。 シナリオは、K津さんが直にスクリプトに書き込んで行くものだから、スタッフも公開してもらえません。 宣伝部に流す資料を、こっそり見せてもらって把握しているところもありましたね。

K津さんは何でもできちゃうから、こっそりバグ潰されることもあります。 終電で帰宅中にプログラマさんから「バグが見つかったから戻ってきて」との電話があり、 戻ろうとして駅に着いてからタクシー乗り場へ走って会社に電話したら、 「今しがたボス(K津さん)が見つけて直しました」と返事が返ってきた、なんてことも。 だから、うっかりバグが出せないんです(苦笑)

〆切り厳守について

これは外部のために延ばせないというのもあるけど、内部の人のためでもあります。 なぜなら延ばすと、内部の開発スタッフがだんだんと腐っていくからです。

〆切り日までに終わらせるつもりでみんな必死でやってきているから、 もし延ばしたところで、同じ調子で1ヶ月とか作業を続けることはできません。 確実にクオリティが上がると言えないのに、延期をするのは意味が無いですよね?

X氏のスクウェアへの就職について

僕のときは、K津さん他3者での面接を受けました。 「ゲームやるなら、戦士と魔法使い、どっちがいい?」とか聞かれて、 戦士で、と答えたら、「明日から来て」って(笑)  学生なんでまだ大学あるんですけど、って困りました(笑)

アンリミについて

元々、アンリミは携帯機用のゲームだったんです。 ワイルドカード好きだった開発者が、あんなゲーム作りたくて作っていました。 それをある日、突然そのままPS2用に持ってくることになって、大慌てしました。 すごろくみたいなシステムも携帯機用ゲームの開発の名残ですね。

頭にソックスとか、本来の位置以外に装備出来るのは仕様だったんです。 ただ本来の位置以外に装備した場合、防御1で効果だけが残るようにしたつもりが、そうなっていなかった。 全身鎧はモニタの子も気付いていたはずなのに…教えてくれなかったのが悔しいです。 こんなの知ってればすぐに直せるのに…。

取り扱い説明書は宣伝部が作っているのですが、 本当は開発側で内容確認したり、必要な資料を出したりしなきゃいけないんです。 でも開発にも余裕が無くて、丸投げになってしまったためにあんな出来になってしまいました。

ミンストについて

サルーインの邪は「無邪気」の邪なんで、神のなかでは幼稚な性格なんです。

なんでサルーインにディスティニーストーンを捧げちゃうのか?というと、 理屈はないけど「そのほうが愉しいから」です。 「より力の封印が解けているサルーインを倒すほど、長く封印できる」とかいう理屈はつけられますけど、ね。

ネット上でDSを捧げていないサルーインが素猿という呼ばれていますが、哀れですね(苦笑)。  サルーインの誇りの為に言わせてもらうと、あれは素のサルーインではなくて、 本来の力をDSによって封印されまくった姿なんですよ。 だから、封印が解けている状態が本当のサルーインの姿なんです。

【X氏補足】 その昔ミルザが戦ったサルーインが、まさに全ての封印が解かれた状態です。

その他、ゲームの話をメインにして計7時間(汗)盛り上がっていました。 X氏のゲームにかける情熱とそのパワーに圧倒され、感動し、楽しいひと時を過ごしました。 (でも家に着いたら、どっと疲れが出ました(笑))

このページをご覧になっている皆様にその雰囲気が少しでも伝われば、こんなに嬉しいことはありません。 長文でしたが最後まで見て頂き、ありがとうございました!!

【Special Thanks】
X様、インタビューのご快諾および掲載のご了承、
本当にありがとうございました!!