王子(の彼)と玉子(の彼)

王子(の彼)と玉子(の彼)

投稿者:オエップ・ウッポァ

【王子(の彼)と玉子(の彼)】

「あ〜ら〜、ばったり。
…ん?あれ?意外と驚いていないな。
なんだかちょっとガッカリ。
もっと警戒心の強い奴だって聞いていたけど。
ひょっとして、なんとなく知っていたのか?
オレたちが出会うことを。
お前さんはどうか知らないが、
オレはお前さんに会うことに待ちくたびれたよ、いや〜長かったよ、ホント。

で、初対面ですごくトートツな用件なんだけどさ…。
お互い協力し合わないか。
なんだかオレたちある部分ですごく似ているじゃん。
あ、見た目じゃないぜ、見た目なんていくらでも変えられるから。
似ているのはある目的で“イキ(行き、息)詰っている”ことがさ。
で、あれこれいろいろ考えたんだが、
どうやらオレの目的はお前さんの手にかかっているんじゃないか、
そしてお前さんの目的も同様にオレの手にかかっているんじゃないか、
なんだか、漠然とそう思うわけよ。
そのために、オレはお前さんに成り代わり、お前さんはオレに成り代わる。
ようは立場を入れ替えっこ、昔『王子と乞食』って話があるんだが、それ真似てみようってことなのさ。
で、…OK?
…お前さんが無反応ってことは了解ってことでいいんだな?
じゃ強引に進めちゃうぞ。

そうだな〜、よし。とりあえず服装を代えよう。
お前さんの甲冑姿、堅苦しくて、オレの好みじゃないんだが、まあ仕方ない。
さあ、脱げ、脱げ。オレも脱ぐから……ってえらく素直に脱ぐな。
もっと警戒してもいいんじゃないのか?
ん〜、なんか調子狂うな〜まあいいけど。
(鎧が地面に落ちた瞬間、“ズドン!!”)
ズドン?!ずどんってどういうことよ?
(鎧を持ち上げようとするが)
うぅぅ、お、重てえ。何だ、この鎧の異常な重さは!
もしかして、まさか、これひょっとして鉛入っているのか?
嘘だろう!!
オレが一番嫌いなマテリアルじゃないか!
これじゃアニマ阻害されて魔法かけづらいだろう!
これって修業アイテムってわけ?
まったく、どういう鍛え方してるんだか…。
お前さんのこんな重荷をオレが背負うってか?
こんなものをオレが身に着けなきゃダメなのかよ…。
まあでも、言い出しっぺはオレだし、ここは我慢するしかないのか。
トホホ…。

うん?火のアニマの剣?それいらないわ、オレ別のもっているから。
もうひとつの…この剣は…そんな偽モノもいらない、オレが欲しいのは…
あっ!パンツはいいんだよ、パンツは!
いったい、どこまで天然なんだよ!
しっかし、よくわからない奴だな〜お前さんは。
オレをドキつかせるなんてただもんじゃないな〜。

う〜ん、着替えたのはいいが、なんかだかちょっと覇気がないというか、男気がないな。
そのロンゲ、それがちょっとイケてないんじゃない?
どれ、ちょっと後ろを向いてみろ。
ほんと世話が焼ける奴だな〜。
お前さんの髪型をだな、すばやく、ちょいちょいのちょいと…。
どうだい!イカスだろう。このカールがポイント!
あ、後ろから見なくちゃわからないか。
どうでもいいけどお前さんのとうちゃんにこう期待されていたんじゃないのかい?
ハンノヴァを守った赤き竜となれと。
ちょっと違うかもしれないがイメージ的に近いんだぜ、その髪型。
そしてオレもまたある意味、竜なのさ。
本来ならオレがしたかった髪型なんだが、まあお前さんに譲ろう。

まったく、ボケ〜として。
…事の重大さ、ちゃんとわかってるのかな?
いっておくけど、オレはお前さんのおばあちゃんのおにいさんの大ファンなんだぜ…。
だからあの人のお前さんだからこそ見込んで、頼むんだぜ、手助けするんだぜ。
オレとお前さん、別々の道を進む。
が、いつでも二人で一人だ。
いくらオレのことを否定しようが、お前さんがあの人の血を引き継いでいる以上、
お前さんがあの人の遺志を受け継ぐ者であるとみなに期待されている以上、
これは避けられない運命なのさ。
あれ?いままで表情ほとんど変えなかったくせに、
こういうときだけ気持ち悪そうな顔すんなよ」

…数年後…。北大陸のノースゲートの村にて。

「頭の上でアリの巣作っている奴なんて初めて見たぜ〜。
でも気に入った。俺はロベルト、この辺を根城に稼いでいるんだ。
どうだい、俺と組まないか?…と、その前にアンタの名前は?」
「………ギュスターヴ」
「冗談はその頭だけにしてくれ」

Page: 1 |

投稿者:bau(実行委)

X氏のインタビューでも「同一人物だと間違えて」とあった、あの御二方のストーリーですね!
しかし…「入れ替え」とは!!その発想に驚き、楽しませて貰いました!!
個人的なツボは中途半端な(苦笑)武器2つをあてがわれるところですね。
「俺にはガラディーンとあわよくば丙子…」という声が聞こえてきそうです。
(そういえばサウスマウンドトップより前はギュス剣ではなくグス剣なんですよね!)
そしてそして、最後にはやっぱり髪型オチ!(滝汗
やっぱりロベルトも初めは見て焦ったでしょうね・・・。
オエップ・ウッポァ様、楽しいストーリーをありがとうございました!!

投稿者:オエップ・ウッポァ

コメントありがとうございます。

 映画『王子と乞食』、『レッドドラゴン』、『見知らぬ乗客』、『ドッペルゲンガー』なんかの分身もののネタをパックってます。また借り物です(汗)
 
「彼は彼の道を最後まで歩み、
最後の瞬間になって、卑怯にも、
それまで彼を助けてきた悪魔と手を切ったりなんかしない。」
(『デミアン』ヘッセ著 高橋健二訳 新潮文庫 1951年 82ページ)
 っていうのを望むよ、相棒!といったイメージです。