豚に真珠

豚に真珠

投稿者:オエップ・ウッポァ

【豚に真珠】

???「皆さん,初めまして。
私、とあるスーパービックプロジェクトの一員です。
名前?いえ名乗るほどの者ではございません。
おかげさまで、このプロジェクトはほぼ完成しました。
実はこれから最終仕上げが始まるのです。
今日はそのためにギュスターヴ陛下を呼びました。
私ごときが、陛下にお会いできるとは夢のようです。
今、とっても緊張しています。
ギュスターヴ陛下は恐ろしい人だと聞いています。
昨夜は泣きました。もう皆さんと会えないかもしれませんので。
あ、足音が近づいてきます。どうして走って来るんでしょう?
いよいよ、私の最後の時がやってまいりました。
皆さん、さようなら、さようなら……。」

ギュスターヴ「待たせたな」
ここはハンノヴァ近くの原っぱ。
フリン「これだよ!ギュス様」
のどかな景色に似つかわしくない大きな楕円形の物体が一つ。
ギュスターヴ「あけびにしちゃでかいな〜」
フリン「違うよ!タマゴ、でっかいタマゴ」

ケルヴィンは彼らから大分遅れてついてきた。足取り重く目は虚ろ。
ケルヴィン「(……ハン・ノヴァ市街地すべて歓楽街だと!!
あいつのいうことやることいつも無茶苦茶だ。
でも今回はとびきりのひどさだ。
あいつの理想や夢は娯楽だらけの町を作るような、所詮こんなものだったのか。
なんのために私やあいつを支持してきた者たちが苦労を重ねてきたのか。
ああ、考えただけ情けなくて涙が出てくる。
そうだ、あいつがくだらん問題数々起こして、そのことであいつにいくら注意しても聞く耳もたず、
そのくせ、その尻拭いさせられるのはいつだって私だ。
もういやだ!もう愛想尽きた!……あいつもこんな街もさっさと見捨ててヤーデへ帰ってやる!)」

フリン「(ケルヴィン、何かぶつぶつ言っているよ。怖いよ)」
ギュスターヴ「(ほっとけ、マリーのことになると変なんだ。ふっ、あいつもガキだよな)」
彼は大きなタマゴに近づき、ゴンゴン乱暴に叩いた。
ギュスターヴ「やけに固いな。だが、この程度の殻ならば……。」
タマゴのまわりをぐるりと周って腕を組んで、ニヤり。
ギュスターヴ「これなら、なんとかなりそうだ。フリン、皿の用意しとけ」
彼の後ろにふっと現れた女性。
レスリー「なんとかって、どうするつもり?」
ギュスターヴ「お!レスリーか。
今から俺様お手製のこのマーベラスな剣を叩きつけて、殻を割って中身を食うのさ」
フリン「そんなのヒドイよ、ギュス様!
孵すために暖めるとか、親を探すとかしないの?」
ギュスターヴ「お前の意見なんか聞いていないぞ、フリン」
レスリー「これ、どっかキッチンにでも持っていったら?」
ギュスターヴ「ここで食うのが美味いんだよ。解ってないな」
レスリー「下品なんだから、もう。」
フリン「大丈夫かな、ギュス様」
ギュスターヴ「びびるなよ、フリン」
鞘から剣を抜き構えて、不敵に笑うギュスターヴ。
ケルヴィンは危険な予兆を感じて我に返った。
ケルヴィン「ギュスターヴ!何する気だ!やめろ!!」
ギュスターヴ「もう遅い!必殺の…!」
刃が殻に当たった瞬間……ボキッ、剣が折れた。
ケルヴィン以外「あっ…」
ケルヴィン「大丈夫か、ギュスターヴ?」
ギュスターヴ「何とも無いが…簡単に折れてしまった。意外だ。
……(ガクッ)……鍛冶屋に帰るぞ、フリン。」
ケルヴィン「歓楽街しかないハン・ノヴァのどこ行くって?!」
ギュスターヴ「ケルヴィン、あれは俺の獲物だ。誰にも手出しさせるなよ!」
ケルヴィン「ギュスターヴ!お前そんな暇あったらハンノヴァの…」
ギュスターヴ「あーうるさい。ムートンだって遊んで来いと言っているんだ」
ケルヴィン「それいつの話だよ!!ガキかお前は?!」
ギュスターヴ「あ、そうだ。ムートンといえば、例の話、彼がちゃんとマリーのこと話をつけてくれたぞ」
ケルヴィン「!」
ギュウターヴはデルタ・ペトラの魔法にかかったように固まるケルヴィンを確認して、
彼はみんなを置いて一人でさっさと去っていった。

しばらくしてケルヴィンの硬直解除。
ケルヴィン「…あ、あ、あのバカが」
フリン「ギュス様、相当、退屈しているんだなー」
レスリー「あ、見て!タマゴにヒビが!」
次の瞬間!
“バコォ〜オ〜オ〜ン!!!”
爆音を響かしてタマゴは砕けた。
レスリー「……やったわ」
フリン「ああ、何もなくなちゃった。ギュス様にこのこと知らせたら、がっかりするだろうな」
レスリー&ケルヴィン「!」
ケルヴィンとレスリーは周りの異変に気づいた。
フリン「えっ、何?どうしたの?ねえ、ケルヴィン、レスリー!」

???「は―――――やりました。やってくださいました。
さすがはギュスターヴ陛下!
ヒゲじじ一族に何かと邪魔されて、いろいろ迂回した人生だったけど、
今じゃいい思い出。
ああ、我が一生に悔い無し!!
これで自由だあああああー!」

???「……というわけで、なんとか逃げ出せたのです。」
???の聞き手「どこまでが本当の話か怪しいがな」

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投稿者:ガルーダ(実行委)

聞き覚えのある台詞の組み合わせが絶妙です!笑ってしまいました!
>それいつの話だよ!!ガキかお前は?!
ここが大変ツボでしたww
???も、人生に悔いが残らなかったようで何よりです^^

投稿者:オエップ・ウッポァ

コメントありがとうございます。
小説なんておこがましいツギハギな雑文ですけど。
ニーナおばさんなら、
「借り物の力で調子に乗んじゃないよ!」と怒るでしょうが。

バラバラだった、それぞれの人たちとそれぞれの思惑が、
長い年月が流れるうちに、何かに導かれて、それぞれ交じり合って互いに補完し、
思惑とは少し外れた形だけれども、何かに実を結ぶ、そんなことをこの作品の中でふっと思ったのは、
やはり時間、そして人とのつながり、かもしれません。